いも奉行ごせん|熊倉 祥太さん
五泉駅前の角に、小さくてカラフルな焼き芋屋さんがあります。
ポップなのぼりが目を惹くお店は、外からは中の様子を伺い知ることはできません。
しかし勇気を出して一歩店内に入ってみると、焼き芋の甘い香りと、
どこか懐かしいファミコンの音色が迎えてくれます。
決して広くはない店内ですが、ネオンの装飾が光り、いもにまつわる本が並び、
見ているだけで楽しい空間が広がっています。
看護師から焼き芋屋へ。静かな挑戦のはじまり

店主の熊倉さんは、10年以上看護師として働いていました。
そんなある日、兄の知り合いが営む新発田の「いも奉行」から、のれん分けの話が舞い込みます。
よく買いに行っていた店で、味も人柄も知っている。
その話をきっかけに、熊倉さんは“違うことに挑戦してみたい”という気持ちが芽生えたそうです。
五泉にはもともと馴染みがありました。
吉清水を汲みに来たり、利休堂や日の出食堂で食事をしたり。
そんな思い出のある場所の近くに空き物件があると知ったとき、
「ここしかない」と思ったそうです。
五泉の人たちに支えられた開業の日々
物件は思った以上に手を入れる必要があり、床や小上がり、基礎まで直す大工事になりました。
それでも、開業のあいさつ回りで訪れた先々で
「がんばってね」と迎えられたことが、心の支えになったといいます。
五泉の人たちのあたたかさが、店の空気にも自然と溶け込んでいきました。
焼き芋の奥深さと、品質へのこだわり

焼き芋は、品種や産地によって個性が大きく変わります。
ホクホク系、ねっとり系、甘みの強さ、香りの違い。
いも奉行ごせんでは、それぞれの特徴に合わせて焼き方や温度を細かく調整しています。
2階にはビニールハウスのような保管庫をつくり、温度と湿度を管理。
さつまいもは暑さに強く、寒さに弱い。
その性質に合わせて、日々の調整を欠かしません。
さらに熊倉さんは、生産者さんに直接会いに行くこともあります。
どんな畑で、どんな人が育てているのかを知ることで、扱い方や焼き方の判断に役立つからです。
そして何より大切にしているのは、味とクオリティ。
「決して安くはないからこそ、味だけはちゃんとしたい」という思いで、
ひとつひとつ丁寧に焼いています。
おやつだけじゃない、さつまいもの楽しみ方
最近は“総菜系”のアレンジが人気なんだとか。
- ホクホク系 × バター・マヨネーズ・塩
- ハニーマスタード
- カレー
- 粉チーズ+オリーブオイル(イタリア風)
- キムチ+ごま油(韓国風)
さらに、五泉の日本酒イベント「ごっつぉまつり」のために開発した
“塩バター大学芋”は、辛口の日本酒に合うように調整した特別な一品です。
ところが今では「赤ワインにも合う」と常連さんから評判で、焼き芋の可能性の広さを感じさせます。
しっとり甘いねっとり系の焼き芋は赤ワインと、
カラメルナッツ大学芋はウィスキーと。
お客さんそれぞれの楽しみ方が自然と育っているのも、この店ならではです。

メニューの多さも、いも奉行ごせんの魅力
店内の黒板には、思わず目移りしてしまうほどのメニューが並びます。
- 焼き芋
- 大学芋(塩バター/みたらしバター/タレ/カラメルナッツ)
- チップス(塩/コンソメ/ハニーバター)
- 極(きわみ):焼き芋から作る特別な大学芋
- 焼き芋ラテ
「焼き芋ってこんなに楽しめるんだ」と驚く人も多いそうです。
店内に流れる、やさしい時間

店内にはファミコンが置かれています。
「一人でやっているので、お待たせすることもあって。
暇つぶしに遊んでもらえたらと思って置きました」と熊倉さん。
商品を受け取ったあとに20〜30分遊んでいく人もいるそうで、
どこか駄菓子屋さんのような、ほっとする空気が流れています。
開店祝いでもらった“いものかぶりもの”も人気で、0歳から86歳まで、
さまざまな人がかぶって写真を撮っていくそうです。
自然と笑顔になる、店の名物のひとつです。
兄弟でつくる“いも奉行”の世界
イベント出店のときは、お兄さんが手伝いに来てくれることも多いそうです。
普段は別の仕事をしているものの、接客が好きで自然とサポートに入ってくれます。
イベントが重なる日は、店舗とイベント、あるいはイベント同士を兄弟で手分けして切り盛り。
二人は雰囲気がよく似ていて、間違えて声をかけてしまうお客さんもいるほどです。
たまに二人そろって店頭に立つ日があり、その光景はちょっとレア。
兄弟でつくる“いも奉行”の温度感が、お店の雰囲気にもやさしくにじんでいます。
筆者は親しみを込めて、お兄さんのことを「あに奉行」と呼んでいます。
この呼び名が、いつかみんなにも広まったらうれしいです。

地域とともに育つお店
駅前商店街の方々が仕事終わりに買いに来てくれたり、
昔このあたりで精肉店を営んでいた方にコロッケの作り方を教わり、
その味を受け継いだ“じゃがいもコロッケ”を販売したり。
地域の歴史が、今のお店の味につながっています。
最近は、小学生の職場体験の受け入れや、別所虚空蔵尊例祭への出店など、
地域とのつながりも広がっているそうです。
これからの挑戦
「干し芋をやってみたいです。
うちのメニューは、お客さんの声から生まれたものが多いんです。
商品開発は兄と一緒にしています。」
五泉のまちとともに、いも奉行ごせんの挑戦はこれからも続きます。
最後に、読者へ

「ぱっと見、外から見ると怪しく見えると思うんですが(笑)
決して怪しくないので、遠慮なくガンガン入ってきてください。」
五泉駅前の角で、今日も甘い空気が流れています。
店舗詳細
| 店名 | いも奉行ごせん |
| 住所 | 五泉市駅前1-4-16(google map) |
| アクセス | 五泉駅より徒歩約4分 |
| 駐車場 | 2台(徒歩1分/日の出食堂向かい・新潟交通観光「五泉駅前」バス停裏) |
| 営業時間 | 火~金 11:00~18:00 土日祝 10:00~18:00 ※なくなり次第終了 |
| 支払い方法 | 現金 |
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photo:Hiroaki Watanabe , tomochiyo










